海外感染症シリーズ (クリミア・コンゴ出血熱)

本日は、厚生労働省検疫所から発表されております、
海外感染症情報のご案内です。

気をつけていたとしても感染症は、私たちの見えない場所から
知らない間に感染する恐ろしい病気。

「相手を知る」意味でも、ご参考にしていただけたら幸いです。

本日は、「クリミア・コンゴ出血熱」について。

クリミア・コンゴ出血熱
Crimean-Congo hemorrhagic fever

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 クリミア・コンゴ出血熱はロシア南西部クリミア地方、中央アジア、中近東、
東欧、アフリカに広く分布しています。

 2001年には、コソボで6名の死亡患者を含む69名のクリミア・コンゴ出血熱感染疑
い患者が発生しました。そのうち18名が確定診断例(15名は検査結果、3名は臨床的お
よび疫学的判断による)と分類されました。また、1999年6月から7月にかけて、ロシ
ア連邦の黒海とカスピ海の間にある Stavropol地区でクリミア・コンゴ出血熱によ
る死亡患者6名を含む65名の患者が発生しました。

 1944年クリミア地方で野外作業中の旧ソ連軍兵士達の間に重篤な熱性疾患が発生
し、1969年、アフリカのコンゴで1956年に分離されたウイルスと同様のウイルスで
あることが判明したことから、クリミア・コンゴ出血熱と命名されました。

 主にダニの刺咬により感染しますが、患者の血液や体液との直接の接触によって
も感染が可能なためヒトからヒトへの院内感染も発生しています。

1 病原体

 ブニヤウイルス科 (Bunyaviridae)ナイロウイルス属( Nairovirus)のウイル
スによります。

2 感染様式

 感染ダニ(マダニ)に咬まれることと患者の血液、体液との直接接触による感染
があります。また、感染ダニをつぶしたりすることでも感染します。現在までに 
27種類以上のマダニがこのウイルスに感染することがわかっています。

 このウイルスは羊、ヤギ、ウシ等のほ乳類(野生、家畜)にも感染性があり、
また地上のエサをついばむ鳥が感染ダニを世界に拡散させる原因となっています。

 いったんヒトに感染すると、ヒトからヒトへの感染(院内感染)が起きることが
問題になります。

3 症状

 潜伏期間はダニの刺咬による感染では通常1~3日、最大9日。感染血液や組織との
直接接触による場合は通常5~9日、最大13日。突然の発熱、頭痛、筋肉痛、リンパ腫
張、発疹出血傾向(血便、血尿、鼻血など)致死率は約 30%と非常に高く、発症第2
週で死に至ります。

 回復患者は、通常発症後 9~10日に症状の改善がみられます。

4 治療方法

  対症療法。リバビリン(薬名)の有効性がみられました。(日本では未認可)

5 予防方法

 ダニが特に活動が活発化(春から秋)する時期、ダニが多数生息する地域への渡航
は控える。通常衣服や肌にダニが付いていないか確認し取り除く。虫よけスプレーを
使用する。

6 クリミア・コンゴ出血熱の分布地域

 アフリカ、中近東、アラビア半島、中央・西アジア(ロシア南西部)、東欧、インド
亜大陸、中国西域
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