見知らぬ町で立ち往生

 ロシアのウラジオストクからモスクワまで全長9,000kmを走るシベリア鉄道。
ヨーロッパに向かう日本人の若者の間でも、ロシアの広大な自然景観を体感できると
あって、渡航ルートとしての価値も年々高まっているようです。
 そんなシベリア鉄道で、こんな出来事がありました。

『3月、長期休暇を取って、シベリア鉄道でのヨーロッパ旅行に出かけた会社員Aさ
ん。シベリア鉄道の出発駅のウラジオストクで日本人青年Bさんと知り合い、一緒に
列車の旅をすることになった。次の停車駅ハバロフスクで、しばらく停留すると思っ
ていた二人は、列車から降りて、駅構内の散策に出かけた。しかし、列車の停留場所
に戻ったときは、二人の乗っていた列車が出発した後だった・・・。

 駅の職員から連絡を受けた在ハバロフスク日本総領事館の領事が駆けつけたとき、
二人はサンダル履きの軽装で手荷物もない状態。領事は、まず二人の荷物を次の停車
駅でハバロフスク行きの列車に積み替えて、こちらまで搬送してもらえるよう、そし
て、翌日のモスクワ行きの列車へ二人が乗れるよう駅職員に依頼した。

結果、二人は無料で翌日の列車に乗ることが認められた。翌日の出発前に総領事館を
訪れた二人の若者は、「お世話になりました。おかげで荷物も返ってきて、このとお
り靴を履くこともできました。」との感謝の挨拶を残し、駅に向かった。』

 

 結果的には、大きなトラブルにはならず、二人にとっては旅の苦い思い出といった
ところでしょうが、それにしても、この二人は強運の持ち主でした。

まず一つ目は、置き忘れた荷物です。ほとんどの荷物を列車の中に残して、列車から
離れるということは、「盗んで下さい」と言っているようなものです。盗難の被害に
遭わず、二人のもとに無事返ってきたこと自体、幸運だったといえます。

二つ目は、近くに日本総領事館があったこと。広いロシアの中にも日本の大使館、総
領事館は合わせて5か所しかありません。総領事館が市内にあり、素早い対応ができた
ことも二人にとって幸いでした。

三つ目は、駅の対応。駅側の計らいで、荷物も無事返り、翌日の列車にも乗ることが
可能になりました。さらに翌日まで、駅内の無料宿泊施設を用意してくれるなど、二
人にとってはまさに天佑とも言えるものでした。

 逆に言うと、これらの幸運が一つでも欠けていれば、旅行を続けることが不可能で
あったということも事実です。場合によっては、3月のまだ寒風吹き荒れている地で、
途方に暮れたまま・・・。という事態になっていたかも知れません。

成田空港

“うっかりミス”も時と場合によっては、命にかかわることもあるのです。