「あの時もっと用心しておけば・・・」

 旅先で、その国の人々や、その国を訪れている他の国の旅行者と親しくなることは
海外旅行のたのしさであり、醍醐味とも言えるでしょう。
 しかし、前回もお話したように、最初から旅行者を陥れる下心を持って、旅行者に
近づき、親しくなろうとする輩が存在することも残念ながら事実です。

 こういった輩は、様々な手口でもって言葉巧みに旅行者に近づき、ときには旅行者
が恐縮してしまうほど懇切にもてなし、旅行者の信頼を得ようとします。
 残念ながら、このような言葉巧みな犯罪者にだまされ、貴重品を奪われるといった
被害に遭う日本人旅行者は後を絶ちません。

『アジアで睡眠薬強盗の被害に遭ったAさん。旅先でやさしそうな青年に声を掛けら
れ親切に街を案内してもらい、一休みした時にクッキーを勧められた。そのとき、旅
行前にホームページで読んだ睡眠薬強盗のことが一瞬頭をよぎったが、「断るのも失
礼」と思い、また、相手も食べていたのでついつい食べてしまった。そして、気が付
いたら入院していた。「まさか自分が被害に遭うとは」、「あんなに親切な人が犯罪
者だなんて信じられない」と言っても後の祭りでした。』

 睡眠薬強盗の際に使用される薬物の種類、量によっては、後々まで重大な後遺症に
苦しめられることがあります。お金だけの被害に留まらないのです

『ヨーロッパを旅行したBさん。旅先の観光名所で他の国の旅行者(と称する者)と
意気投合し、誘われるままにバーへ行った。どうも雰囲気がおかしいので、早々に退
散しようと清算を申し出たらとんでもない金額を請求され、抗議したら大男が現れて
すごんだ。自分を誘った男は気前よく支払っていたので自分もあきらめて支払うハメ
になった。「皆が一味で自分が罠にはめられたことはその場でわかった」と言っても
後の祭りでした。』

 「旅先で出会う人は全て悪意をもって近づいてくるので、旅行中は始終警戒しまし
ょう」などと言われると、せっかくのたのしい海外旅行が台なしだと思われるでしょ
う。
 でも、実際に被害に遭われた方は、「あのとき、もっと用心していれば...」と
ほぞをかみ、後々までその旅行や旅先のことが後味の悪い記憶として残るのではない
でしょうか。