インドの医療事情とは?

本日から外務省から発表されている世界の医療事情をご紹介致します。
海外旅行のお役に立てば幸いです。
本日はインドの医療事情です。

衛生・医療事情一般

 インドは、日本の約9倍、旧ソ連を除くヨーロッパ全域の面積に相当するほど
広大な面積を有し、人口では10億人を超え、中国に次ぐ世界第2位になっています。
1年は暑期(4月~5月)、雨期(6月~9月)、中間期(10月~11月)、
冬期(12月~3月)の4つに分けられ、南西の季節風が吹く雨期に年間雨量の
80%~90%が集中しています。
地域によって気候に相違がありますが、デリー市及び近郊は暑期には40度を
超える猛暑となりエアコンをフル回転させても追いつかないことがある一方、
冬期は最低気温が5度近くまで下がるため効率の低い暖房機では十分に暖が取れ
ない等、一年間で気温の差が非常に大きいことが特徴です。
インドは感染症の宝庫といわれ、結核患者数、HIV/AIDS感染者、狂犬病の
死亡者等は世界最大となっています。
国家的に取り組んでいる医療問題としてマラリア、カラ・アザール、結核、
ハンセン病、失明に至る眼疾患、HIV/AIDS、ポリオ等があります。
インドは周辺国より医療水準が高いといわれていますが、これは都市部の
近代的私立病院の場合で、国公立病院では人口過剰及び財源的制約から十分な
医療サービスが受けられないのが現状です。
最近、ミネラルウォーターを含む飲料水中の残留農薬の問題、水・土壌中の
水銀汚染の問題等がNGOにより指摘されています。
都市部では自動車台数の急激な増加による大気汚染の問題も深刻です。
政府は水質汚濁防止・規制法、大気汚染防止・規制法を制定、無鉛ガソリンの
導入、Euro-2の排出ガス規制等の対策を行っていますが、まだまだ後手に回って
いるのが実情であり、都市部に居住する場合には、空気清浄機や金属除去も
可能な高性能浄水器を利用する等、個人で対策を立てることが必要です。
都市部には邦人の利用が可能な近代的私立病院・クリニックがあり、
欧米で研修した優秀な医師が勤務していますので、歯科治療を含む日常の
診療を受ける事に特に問題はありませんが、医師以外の医療スタッフのレベルが
低い事もあり、重症な疾患の場合や手術の場合には感染症等の合併症のリスクが
伴います。
当地での医療に問題があるために近隣先進国や日本に緊急搬送されるケースも
少なくありませんので、旅行傷害保険には必ず加入しておいてください。
また、病院や医師により治療のレベル、信頼性に大きな差がありますので、
受診する前には保険会社のアシスタンスサービスに相談するようにしましょう。
保険に加入せずにインドに旅行、赴任する事は無謀です。

(かかり易い病気・怪我)

1:経口感染症:食べ物や飲み物を介して口から侵入する感染症であり、
インドで生活する際、最も多く経験する疾患です。
インドを旅行する外国人の30%から40%は2週間以内に旅行者下痢症にかかると
言われています。生水や生ものを摂らないように気をつければ、経口感染症の
予防は可能です。
A型肝炎、E型肝炎、腸チフス・パラチフス、アメーバ赤痢、ジアルジア、
細菌性赤痢、コレラ、大腸菌性下痢症等がインドで流行している主な
経口感染症です。

2:デング熱・デング出血熱:デング熱は、主にネッタイシマカで媒介される
感染症で、患者は雨期の後の9月から11月に増加する傾向があります。
潜伏期間(蚊に刺されてから発病するまでの時間)は約1週間で、頭痛、倦怠感、
発熱があり、その後全身の筋肉痛が生じ、解熱する頃には赤い班状の皮疹が出る
という経過をたどります。
出血熱の場合は、更に血小板数が低下し全身から出血するようになり、
ショック状態に陥ると死亡することがあります。
2003年はデリー市内だけで2500人以上が罹患し、死亡者数も30人以上でした
(全国集計では患者数約8000名、死亡者数100名以上)。
1996年にはデリー市内だけで1万人以上が罹患(死亡者数400名以上)する
大流行もありました。

3: マラリア:基本的には地方での発生が中心で、東部のオリッサ州、ウェスト・
ベンガル州、西部のグジャラート州、マハラシュトラ州、カルナタカ州及び
その周辺は高度流行地であり特に注意が必要です。
しかし最近はデリーやコルカタ等の都市部でも季節労働者が居住するスラム街
を中心に散発的に発生しています。
三日熱マラリアが7割を占めると言われていますが、脳マラリアに進展し重症化
することが知られている熱帯熱マラリアの比率も3割程度あり、蚊に刺されない
ための予防対策を充分身につけておくことが重要です。
季節的には年間を通じて見られますが、6月から9月頃までの雨期に増加します。
クロロキン耐性(効かない)マラリアも増加しています。
流行地に滞在後1週間以上後に風邪症状が無いのに寒気がして高熱をきたすよう
でしたら、マラリアも疑って早めに検査を受けましょう。
都市部に居住する限りは抗マラリア薬の予防内服をする必要はありません。
予防内服をする場合にはクロロキン(300mg週1回)+プログアニアル
(200mg毎日)の併用が勧められています。

4: 結核及びその他の呼吸器疾患:結核は世界的規模で増加傾向にあります。
その中で もインドは罹患率が極めて高く、世界の感染者の3分の一を占める
とされ、毎年200万人が新規に罹患しています。
デリー市の報告によれば2003年の新規患者数は39,000人であり、
その内11,000人が喀痰検査陽性、即ち感染性のある結核患者と診断されて
います。したがって、映画館など人が多く集まる場所は注意が必要です。
ローカルスタッフや使用人から感染する場合もありますので、少なくとも年に
一度は職員の健康診断を実施してください。
また都市部では大気汚染の影響で気管支喘息など呼吸器疾患が近年増加
しています。

5: 狂犬病:インドでは年間3万人が狂犬病で死亡しており、その数は世界全体の
80%にのぼると言われています。インドにおいて、被疑動物の脳で狂犬病罹患の
有無を検査した結果、犬、猿、牛、馬、猫、バッファロー、マングース、豚、
ジャッカル、ネズミ、山羊、兎等に感染例が挙げられています。
野良犬の群れには近づかない、リスや野良猫等にも手を出さない等の注意が
必要です。特に子供たちには、野生動物に近づかないよう指導することが重要
です。

EK192_L

健康上心掛ける事

 インドで健康に過ごすためには、以下の点に注意してください。

(1) 生水、生ものは避ける。(2) 睡眠不足、過労は避ける。(3)外出後の
手洗い、うがいの励行。(4)適度な運動をする。(5) 十分に水分を摂取する。
喉が渇く前に飲むようにしましょう。(6)野生の動物には触らない。
(7)暴飲暴食は避ける。(8)食用油を使いすぎない。古い油は避ける。
(9)素足で歩かない。(10)草むらには入らない。 特に雨季にはコブラ等の
毒蛇に注意する。(11)食事のバランスを考え、肉食に偏らない。(12)炎天下
では帽子をかぶる。サングラスを着用する。(13)蚊対策に網戸を取り付ける。
窓は開けっ放しにしない。外出時には虫除けクリームを塗る。(14)違法な薬物
に手を出さない。

以上の事に注意し、自分の健康は自分で守るという心構えを持つようにしましょう。

インドは今、急激な経済成長を遂げている国。
生意気な言い方ですが、
今後衛生面や、インフラの整備が進み、渡航しても上記注意事項が
減ってゆく国になっていく事と思います。