海外渡航と予防接種 2

本日も先日に引き続き、留学・駐在などで長期に海外へ滞在される方や、
一部地域へ渡航する際に必要な予防接種についての豆知識です。

各種感染症に対してのワクチン接種目安の一覧です。

【破傷風】

 冒険旅行などで怪我をする可能性の高い人にお勧めのワクチンです。
破傷風菌は世界中の土壌の至る所に存在し、日本でも毎年死亡者が報告されて
います。旅行の有無に関わらず接種が勧められますが、途上国では先進国よりも
怪我をしやすく、医療事情が悪かったり、言葉の問題で病院を受診しなかったり
すると命に関わることもあるので、是非接種しておいて下さい。
 破傷風ワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン(ジフテリア
、破傷風、百日咳)に含まれていますので、定期予防接種で破傷風・ジフテリア
ワクチンを12歳の時に受けていれば、20代前半位までは免疫がありますので、
接種は不要です。それを過ぎたら、1回の追加接種で10年間有効な免疫がつきます。

■接種方法-3回接種 初回接種(0.5ml)

↓ 3~8週間

2回目接種(0.5ml)

↓ 後6~18か月

追加接種(0.5ml)

【A型肝炎】

 途上国に中・長期(1ヶ月以上)滞在する人にお勧めのワクチンです。
特に60才以下の人は抗体保有率が低いため、接種を勧めます。
 日本では16歳未満の人には接種できません(現在申請中)。
 A型肝炎は食べ物から感染する病気で、アジア、アフリカ、中南米に広く存在
します。発症すると倦怠感が強くなり、重症になると1か月以上の入院が必要となる
場合があります。
 ワクチンは2-4週間隔で2回接種します。6か月以上滞在するのであれば6か月目
にもう1回接種すると約5年間効果が持続します。

■接種方法-3回接種 初回接種(0.5ml)

↓ 2~4週間後

2回目接種(0.5ml)

↓ 6か月後

3回目接種(0.5ml)

【狂犬病】

 狂犬病は、発病すればほぼ100%が死亡する怖い病気です。
海外では、オセアニアなど一部を除きイヌだけでなくキツネ、アライグマ、
コウモリなどの動物に咬まれることによって感染する危険性が高く、長期滞在、
研究者など動物と直接接触し感染の機会の多い場合や、奥地・秘境などへの渡航
ですぐに十分な医療機関にかかれない人にお勧めのワクチンです。
 狂犬病は、我が国では患者の発生が過去40年間以上報告されていませんが、
アジア、アフリカ、中南米では多数の患者が発生しているため、これらの国への
旅行者や長期滞在者は予防接種をしておくことを勧めます。
 ワクチンは4週間隔で2回接種し、さらに6から12か月後に3回目を接種します。
その後の長期にわたる予防のためには、1年から2年に1回の追加接種が望まれます。
 3回のワクチン接種後、6か月以内に咬まれた場合には0日、3日の2回の接種が必要
です。また、6か月経過後に咬まれた場合には0日、3日、7日、14日、30日、90日の
6回のワクチン接種が必要です。

■接種方法-3回接種 初回接種 ( 1.0ml )

↓ 4週間後

2回目接種 ( 1.0ml )

↓ 6~12か月後

3回目接種 ( 1.0ml )

【日本脳炎】

 流行地(東アジア、南アジア、東南アジア)へ行く人にお勧めのワクチンです。
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊の刺咬によって起こる重篤な急性脳
炎で、死亡率が高く、後遺症を残す例も多くみられています。
 ワクチンは1~4週間間隔で2回接種し、1年後追加接種を1回する(基礎免疫が
完了)。基礎免疫の完了後は、1回の接種で4~5年間有効な免疫がつきます。

■接種方法-3回接種 初回接種(0.5ml)

↓ 1~4週間後

2回目接種(0.5ml)

↓ 12か月後

3回目接種(0.5ml)

【B型肝炎】

 以前は輸血や医療従事者の注射針による針刺し事故など血液を介した感染が問題と
されていましたが、現在ではB型肝炎(活動期)の母親から生まれる新生児期を中心
とした持続感染(慢性化)と、思春期以降の性行為(唾液や体液の濃厚接触)を通
じた一過性感染の2つが主な原因となっています。
 一般に健康な(免疫不全でない)成人の感染では、ほとんどが一過性感染で、
急性肝炎の経過をとるものと不顕性感染となるものがあり、いずれも終生免疫を得
ます。一過性感染例では劇症化して死亡する例(約2%)を除くと、全例がおおよそ
3ヶ月で肝機能が正常化し、完全に治癒して慢性化に移行することはありません。
 海外渡航では、渡航先(主に東南アジア)での性行為に注意することで予防が
可能なことから、検疫所ではB型肝炎ワクチンの接種は行っていません。
 必要な場合は近くの医療機関に相談して下さい。

■接種方法-3回接種 初回接種 ( 0.5ml )

↓ 4週間後

2回目接種 ( 0.5ml )

↓ 6か月後

3回目接種 ( 0.5ml )

【ポリオ】

 南アジア、中近東、アフリカへ行く人は追加接種を考えます。
 ポリオはポリオウイルスによって起こされる急性の麻痺を主徴とする疾患です。
外国では小児の定期接種で3回以上接種していますが、日本では2回接種で、
感染予防には必ずしも十分ではありません。特に、昭和50年から52年生まれの人は
ポリオワクチンの効果が低かったことがわかっていますので、海外旅行と関係なく
追加接種を受けるように努めて下さい。

■ 経口接種
接種方法- 1回接種 追加接種  0.05ml

【黄 熱】

 アフリカや南米の熱帯地域に行く人にお勧めのワクチンです。黄熱ワクチンの
接種済み証明書を入国時に要求する国や帰国時の乗り換えの時に要求する国もあり
ますので、検疫所で確認して下さい。
 黄熱は蚊によって媒介されるウイルス性の感染症で、致死率は5~10%ですが、
流行時や免疫をもたない旅行者などでは、60%以上に達するという報告もあります。
 ワクチンは1回の接種で10年間有効です。接種済み証明書は接種後10日目から有効
になります。

■接種方法-1回接種 1回接種  0.5ml

【コレラ】

 コレラに対してワクチンはありますが、効果等の問題があるので、あまりお勧め
できません。
 ワクチンによる予防接種よりも、海外での衛生面や食生活に注意することの方が
コレラの予防には重要と考えられます。

■接種方法-3回接種 初回接種 ( 0.5ml )

↓ 5~7日後

2回目接種 ( 1.0ml )

↓ 6か月以内

追加接種 ( 0.5ml )

【ペスト】

 ペストの予防接種は接種後の局所症状(副反応)が強く、効果についても必ずし
も十分でないので、ペストの流行地での医療従事者や、濃厚な感染の危険性の高い
人以外にはお勧めできません。
 ベトナムや中国などの常在地域や米国中西部の国立森林公園でも毎年ペスト患者
が出ています。野ウサギや野リスなどにペスト菌を保有したノミが寄生しているこ
とがあるので、これらの動物には触らないように注意しましょう。

■接種方法-3回接種 初回接種 ( 0.5ml )

↓ 3日後

2回目接種 ( 1.0ml )

↓ 3日後

3回目接種 ( 1.5ml )

【ジフテリア】

 ロシア、東ヨーロッパに長期間行く人にお勧めのワクチンです。
 ジフテリアワクチンは1968年(昭和43年)から始まった3種混合ワクチン
(ジフテリア、破傷風、百日咳)に含まれていますので、定期予防接種で破傷風・
ジフテリアワクチンを12歳の時に受けていれば、20代前半くらいまでは免疫があり
ますので、それまでは接種は不要です。その後は、1回の追加接種で10年間有効な
免疫がつきます。

■接種方法-3回接種 初回接種(0.5ml)

↓ 3~8週間

2回目接種(0.5ml)

↓ 後6~18か月

追加接種(0.5ml)

【麻疹】

 主に小児期に発症する感染力の強い全身性感染症で、合併症として肺炎、中耳炎
などの頻度が多く、また麻疹脳炎や亜急性硬化性全脳炎など重症なものがあります。
 麻疹ワクチンを今まで一度も受けたことがなく、かつ麻疹に未罹患の人にワクチ
ン接種をお勧めします。
 麻疹ワクチンは生後9か月から接種が可能です。海外へ渡航する場合は、定期予防
接種で接種料金が公費でまかなわれない1歳未満であっても、9か月以上であれば接
種するようにしましょう。

■接種方法-1回接種 1回接種  0.5ml

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