海外感染症シリーズ (黄熱)

本日は、厚生労働省検疫所から発表されております、
海外感染症情報のご案内です。

気をつけていたとしても感染症は、私たちの見えない場所から
知らない間に感染する恐ろしい病気。

「相手を知る」意味でも、ご参考にしていただけたら幸いです。

本日は、「黄熱」について。

黄 熱
Yellow Fever

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黄熱は蚊によって媒介されるウイルス性の感染症です。
2002年には、セネガルで黄熱の流行が発生し、死亡患者10名を含む黄熱患者57名が
発生しました。また、2001年には、コートジボワール、ギニア、リベリア、ペルー、
ブラジルなどの国で黄熱が流行し、特にコートジボワールでは、20地区で死亡患者21
名を含む黄熱感染疑い患者203名が発生し、首都Abidjanでは死亡患者7名を含む黄熱
感染疑い患者55名が報告され、そのうち7名が確定診断されました。
また、2000年には、リベリア、ナイジェリア、ブラジルなどの国での黄熱流行があ
りました。

黄熱は、蚊から人へと感染することで発生します。黄熱には都市型、森林型と都市
型が混在した型がみられます。

有効な予防接種があるため旅行者が感染することは少なくなりましたが、各種の動
物と蚊の間でサイクルが形成されているので、黄熱の撲滅は困難であると言われてい
ます。

海外ではアフリカ、中南米地域の国々を中心に依然として患者発生がみられますの
で、こうした地域への旅行者は予防接種を受けるなどの注意が必要です。

1 病原体

 黄熱ウイルス。フラビウイルスに属する。

2 感染様式

 都市型はウイルスを持った蚊(ネッタイシマカ)に吸血されることで感染します。
森林型は通常、脊椎動物(猿や有袋類)と蚊の間に感染サイクルがあり、人に感染
することはまれですが、森林に人が入れば感染することもあります。

3 症状

 様々な症状を起こす急性疾患で、最も軽い場合は鑑別はできませんが、通常、3~6
日の潜伏期間の後、突然の発熱、頭痛、筋肉痛、悪心、嘔吐などを起こします。
病気が進むにつれて、出血症状(鼻血、歯肉からの出血、吐血)や蛋白尿が現れま
す。黄疸は感染初期には軽く、次第に重症となります。死亡率は、流行地の人の場合
は5%以下ですが、旅行者などでは50%以上になることがあります。

4 治療方法

 これといった治療法はなく、対症療法が主となります。

5 予防方法

 1回の接種で10年間有効な予防接種がありますので、流行地に旅行する際は接種を
受けることが最も有効な予防法です。予防接種をしていない場合は蚊に刺されないよ
うにすることが大切です。しかし、森林や森林に隣接した都市部では蚊の猛襲を受け
ることがあり、こういった場合には防虫スプレー(忌避剤)だけでは効果は期待でき
ません。

6 注意点

 黄熱は、唯一渡航に際して予防接種の国際証明書が要求される感染症です。
流行地に渡航する場合はもちろんのこと、流行地を経由し、他の国に入国する場合
でも1歳以上(国によっては6ヶ月以上の乳幼児)の渡航者に予防接種証明書が要求さ
れることがあります。予防接種をしていない場合は入国拒否あるいは入国時に接種さ
れることがあります。海外旅行をする場合には、渡航先で要求されている予防接種を
確認することが必要ですので、前もって最寄りの検疫所にお問い合わせください。

7 黄熱の流行地帯

 WHOにより黄熱リスク国に指定されているのは下記の国々です(2007年版ITH)

アフリカ地域 アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、カメルーン、ガーナ、ガボン、
ガンビア、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国(旧ザイ
ール)、コートジボワール、サントメ・プリンシペ、シェラレオネ、スーダン、セネガ
ル、赤道ギニア、ソマリア、タンザニア、中央アフリカ、チャド、トーゴ、ナイジェ
リア、ニジェール、ブルキナファソ、ブルンジ、ベナン、マリ、リベリア、ルワン
ダ、モーリタニア
アメリカ地域 エクアドル、ガイアナ、コロンビア、スリナム、パナマ、仏領ギアナ、
ブラジル、ペルー、ベネズエラ、ボリビア、トリニダードトバコ
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