海外感染症シリーズ (狂牛病とクロイツフェルト・ヤコブ病)

本日は、厚生労働省検疫所から発表されております、
海外感染症情報のご案内シリーズです。

気をつけていたとしても感染症は、私たちの見えない場所から
知らない間に感染する恐ろしい病気。

「相手を知る」意味でも、ご参考にしていただけたら幸いです。

本日は、ウシ海綿状脳症(狂牛病)と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
について。

ウシ海綿状脳症(狂牛病)と変異型クロイツフェルト・ヤコブ病
 BSE and vCJD

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 1985年に英国で発生し、1986年に初めて確認されたウシ海綿状脳症(狂牛病)は、
発症したウシ由来の飼料を牛に与えたため、ウシの発症症例数は1992年には37,280頭
まで増加しました。1988年より発症したウシの飼料化が禁止され、1993年より狂牛病
頭数は減少し始め、2001年には、526頭まで減少しました。
 しかし、英国で始まった狂牛病は近隣の諸国(ヨーロッパ18カ国と日本)へ広がり
が見られました。1990年代はじめより従来のクロイツフェルト・ヤコブ病に類似する
が、より若年層に発生する新たな疾患(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)が報告
されていました。1996年にこの病気が、狂牛病のウシを食べることにより起こる病気
であることが判明しました。

 これまでに報告された変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の患者数は、疑い例を含
めて、英国で113例、フランス5例、アイルランド1例、香港1例(ヨーロッパからの帰
国者)、イタリア1例のみでした。狂牛病の牛を食べることでヒトに発生する変異型
クロイツフェルト・ヤコブ病の発生リスクの大きさはまだ不明な点が多くあります。

1 病因物質

 異常プリオン(タンパクの一種)

2 発生機序

 異常プリオンは通常の消毒方法に耐性があり、熱にも比較的安定です。

 通常、摂食されたタンパク質は消化酵素でアミノ酸に分解され吸収されますが、
異常プリオンは消化酵素で分解されず、何らかのメカニズムで体内に入ります。

 体内に取り込まれた異常プリオンは体内で正常プリオンの立体構造を変化させ、
正常プリオンを異常プリオンへと変えていくと考えられています。そのため体内に異
常プリオンが蓄積し、神経の変性が起こり変異型クロイツフェルト・ヤコブ病を発症
すると考えられています。

3 予防方法

 現在では多くの国で牛が狂牛病に罹っていないかどうか検査が行われており、以前
より、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病に罹患する危険性はかなり減少していると
思われます。また、狂牛病の報告されている国では、牛の危険部位(脳や小腸など)
を避け、牛肉を食べる場合には骨付き(背骨など)の肉や練り物(ソーセージやパ
テ)を避けることで発症の危険性を減らすことが出来ると思われます。